豪(細田佳央太)の戦死の報せに、悲嘆する朝田家。皆が口々に「豪は立派だった」と言う中、押し黙る蘭子(河合優実)。一晩中眠れない蘭子に、のぶ(今田美桜)はかける言葉がない。
引用:guideテレビ王国
あらすじ&予想
🪦「立派」って、誰のための言葉?
戦死の報が届いた翌日。
朝田家の作業場には、言葉を失った釜次の姿。
「豪は、御国のために命を惜しまんと戦うたがじゃ。おまんの弟子に、立派じゃと言うちゃれ」
「のう、そうじゃろう、のぶちゃん。のぶちゃんやったら、英霊になった豪に、立派じゃと言うちゃりたいじゃろう」
「のぶちゃんは愛国の鑑じゃきのう…………」
周囲の期待と視線が、のぶにのしかかる。
それでも、のぶは震える声で応えました。
「………豪ちゃんは、御国のために立派にご奉公したがです」
重い……苦しい……けれど、誰も言葉を止められない。
そしてそれを、蘭子はただ黙って聞いていました。
🍚線香と白いごはんと、返らぬ人
深夜。
作業場では、蘭子がひとり線香の火を守っていました。
遺影もお骨もない――あるのは、豪の袢纏だけ。
「豪ちゃん、お腹すいたねえ……」
ごはんを山盛りに盛って、箸を立てるその姿が、静かで、痛々しくて……。
二階から降りてきたのぶも、声をかけることができませんでした。
🎣ヤムおんちゃんの想い
のぶは耐えきれず、パン作業場へ。
そこには、屋村がぼんやりと釣り竿を見つめていました。
「毎日会ってます、だと…………」
「あいつは御国のために死ねて、今頃、本当に喜んでんのかね……立派だったって、言ってやらねえといけないのかね? 愛国の先生」
屋村のひと言が胸に刺さります。
“立派”という言葉の重さと、空虚さ――
誰が言うべきで、誰が決めるものなんだろう。
🙏集まる人々、向けられる「名誉」の言葉
翌日。
作業場には線香をあげる人々が続々と訪れ、読経が響きます。
「原豪さんは英霊になられたがです。ご立派に本望を遂げられたことと思います」
国防婦人会も、口々に「立派」と讃えます。
そこへ、のぶの教え子たちが列を作ってやってきました。
「のぶ先生、わしら、戦死された兵隊さんに手のひらを合わせとうて来たがです」
「わしらあもいつか兵隊さんになって、御国のために立派にご奉公したいがです!」
この言葉、のぶもつらかったはず。
でも、もっとつらかったのは――蘭子。
その場を逃げるように立ち去りました。
👣下駄の鼻緒と、あの日の記憶
蘭子がたどり着いたのは、誰もいない空き地。
足元の下駄の鼻緒が切れかかっているのを見て、あの優しい日を思い出します。
去り際に鼻緒が切れた蘭子の足を、豪がそっと膝に乗せて直してくれた日。
その分厚い手の感触、声、空気――全部、まだそこにあるようで、でもどこにもいない。
振り返ると、のぶが立っていました。
「………どこが、立派ながで……うちには分からん。みんなが立派やと言うたびに……なんべんもなんべんも聞くたびに······うちは悔しゅうてたまらん」
🧨涙の爆発、「立派」じゃなくて「帰ってきて」
のぶは蘭子の思いを受け止めながら、こう言います。
「豪ちゃんは、蘭子やうちの家族や、この国の人らあのために、命をかけて戦うたがや……やき、立派やと言うちゃりなさい」
でも、蘭子はもう限界でした。
「お姉ちゃん、本気でそう思うちゅうがかえ? 児童らあにも、そうやって教えゆうがかえ? 男の子は兵隊になって戦争に行きなさい……戦死したら、みんなで立派やと言いましょうって?」
「そんなのウソっぱちゃ! みんなウソっぱちや!」
この叫びは、戦時下に生きるすべての人の、心の奥に刺さります。
「うちは立派らあて……決して、立派らあて思わんき!」
🤱泣きなさい。胸の奥にあった全ての悲しみ
蘭子はそのまま走り出し、羽多子に出くわします。
そこでようやく、涙があふれました。
「…………会いたい……豪ちゃんに会いたいき……」
「……泣きなさい……思いっきり泣いたらえい……」
羽多子の胸に顔をうずめ、蘭子は子どものように泣きました。
それは、ずっと堪えてきた思いの洪水――
のぶも、その涙を止めることができませんでした。
※この記事はあくまで予想なので、実際の放送内容と相違がある場合があることをご了承ください。
感想&考察
豪の戦死…
それをもっても、のぶは「愛国の鏡」として「立派」と言えるのでしょうか。
のぶの心に初めての迷いが生まれたように見えました。
それでも、頭で考え、のぶは「立派だった」と言います。
女子師範学校で2年間かけて学んできたこと、そして教師として1年半子供たちに教えてきたこと。
愛国精神は、今ののぶの根幹を支えるものとして生きています。
たとえ大切な豪の死でさえ、感情に流されず、愛国精神に従い気持ちを自らコントロールすることを選んだのでしょう。
***
悲しみに暮れる朝田家の人々。
弔問に訪れる人も皆「立派だ」と豪をたたえます。
メイコは初めからずっと声を出して泣いています。
ここまで素直に感情表現できるのがまた、天真爛漫なメイコの良さですね。
そして、のぶは教え子である男の子たちに「立派な兵隊さんになりたい」と言われます。
可愛い可愛い子供たちに、豪と同じ戦死を望ませている。
また、のぶに一瞬の気持ちの陰りが垣間見えました。
***
のぶに、本当に豪は国のために戦死したことを喜んでいるのだろうかと問いかけるヤムおじさん。
「愛国の先生」
のぶの代名詞のようになっているその言葉が、胸に突き刺さります。
***
蘭子に、豪が国のために戦い死んだことを立派と誇りに思うように説くのぶ。
本気で思っているのか確かめる蘭子。
譲らないのぶ。
そして、蘭子の本心が心の叫びとして出るのでした。
いつもクールに話す蘭子が、ここまで取り乱して気持ちを吐き出したことがあったでしょうか。
「そんなのウソっぱちや!うちは豪ちゃんのお嫁さんになるがやきー、絶対にもんてきてよ、って言うたがよ…豪ちゃんも、もんてきますっ言うたがやき!絶対にもんてきますって!‥‥もんてこんのに…もう、もんてこれんがやのに、どこが立派ながで!」
「みんな。みんなウソっぱちや!うちは立派らあて…決して、立派らあて思わんき!」
これこそ、婚約者が戦死してしまい、残された人の本当の気持ち。
人がなんと言おうと、蘭子は豪との約束だけを信じてきました。
信じることが、心配や寂しさを乗り越える唯一の方法だったのでしょう。
約束が果たされず、戦死してしまったとたん、周囲が立派だとはやし立てる。
蘭子にとって、そんな気持ちの切り替えなんて出来るはずがなかったのです。
***
蘭子、気持ちをのぶにぶつけることで、やっと自分の想いと向き合えてように見えました。
そして駆け付けた母・羽多子がその感情を受け止めます。
「思いっきり泣きなさい」
そう、蘭子はここにきて初めて、涙を流すことができたのです。
せき止めていた感情が洪水のようにあふれ出します。
そしてまた、のぶも涙を流しました。
のぶの中で、頭で考える「愛国精神」と心で感じる「死の悲しみ」がせめぎ合っているようでした。
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