銃撃された岩男(濱尾ノリタカ)は、嵩(北村匠海)にリンはよくやったと言って息絶える。八木(妻夫木聡)は、リンは親のかたきをうったのだと言い、嵩に岩男のかたきをとりたいかと尋ねる。そして、やり場のない怒りを爆発させる八木。初めて見る八木の姿に、嵩は立ちすくむだけだった。やがて食料難は限界を達し、嵩はとうとう地面に倒れこむ。
引用:guideテレビ王国
あらすじ&予想
胸に抱いた“理由”の重み
嵩たちが駆けつけると、岩男は倒れ、八木たちが駆け寄っていました。
「待て、違うんだ。あの子は関係ありません!」
岩男は最後までリンをかばおうとします。瀕死の状態で、彼は語りました。
「リンはようやった……これで、えいがや」
最期の言葉が「喜んじゅう」となるなんて……岩男の中には、戦争を超えた情が確かにあったのだと思わされます😭。
そして八木は嵩にリンの過去を語ります。
リンの両親はゲリラ討伐で命を落とし、母はリンをかばって亡くなったといいます。
その母を撃ったのが、岩男だった可能性が……。
「仇のはずなのに、いつの間にか、あいつを好きになっていたそうだ」
この矛盾、怒りと愛情のせめぎ合いに心が張り裂けそうです。
この岩男とリンのエピソードは、やなせたかしさん作の絵本「チリンの鈴」が原案となっています。
よろしければこちらの記事もご覧ください。

忘れられる者と、忘れられない者と
八木は戦争の標語を破り捨て、言います。
「卑怯者は、忘れることができる。だが、卑怯者でない奴は、決して忘れられない」
この言葉、ずしんときます。正しさを求める者が苦しむ構造、それでも誇りを失いたくない想い……嵩が何も答えられないのも無理はありません。
冷静沈着で、どこかこの戦争を俯瞰して見ている様子だった八木。
八木が初めて感情を爆発させる姿、どれだけ迫力があるのでしょう。
放送での妻夫木さんの演技を創造していまいます。
父の幻影と、再び立ち上がる力
食糧難が極限に達し、嵩もついに倒れます。
意識が遠のく中、彼の目の前に父・清が現れました。
「こんなくだらない戦争を始めたのは人間だ。だが、人は人を喜ばせることもできる」
父の言葉に励まされ、「何十年かかっても諦めずにつくるんだ」と、紙芝居に込めた願いが再び灯ります🌱。
目を覚ますと、健太郎がそばにいてくれました。
救援隊が来て、食料も届き、お粥を差し出される嵩。
ようやく希望が差し込む瞬間です🍚✨。
枕元には、幻の中で手渡された父の手帳。
あれが夢であっても、嵩の心に残ったものは確かです。
この戦争で紙芝居の題材の題材の元となったり、嵩の窮地を救ってくれた、父・清の存在。
実際、やなせたかしさんの戦地での思い出にも、父・清さんは強く影響していました。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。

生と死、敵と味方、信頼と裏切り――この日一日で、それぞれの境界線が崩れていきました。
それでも嵩の胸に残るのは、人を喜ばせたいという願い。
それが、たとえ戦火の中でも、人が人である証なのかもしれません🌌。
※この記事はあくまで予想なので、実際の放送内容と相違がある場合があることをご了承ください。
《第58話|第60話》
朝ドラ「あんぱん」あらすじ一覧はこちら
感想&考察
オープニング曲もなしに、「あんぱん」タイトル表示のみで始まった本日。
岩男の死と嵩の絶望の深い悲しみの中で放送の15分間があっという間に過ぎました。
岩男は、「リンはようやった」との言葉を残しで亡くなりました。
ずっと、岩男は知っていたのですね、自分がリンの両親を殺したことを。
子供を持つ身になり、リンを大切に思えば思うほど、自分のせいでリンを苦しませていることに、岩男自身も苦しんできたのかもしれません。
しかし、親の仇を撃ってもリンの心はちっとも晴れませんでした。
リンは、親を殺した岩男を憎んでいたのに、いつのまにか心から慕っていたのです。
憎むきもちも、慕うきもちも、どちらも偽りのないリンの本心。
相反する2つの想いを抱えているのです。
こちらの関連記事でも書きましたが、このエピソードはやなせたかしさん作「チリンのすず」が原案となっています。
やなせたかしさんは、悪党は初めから悪人だったわけではない、悪人にも正義はある、と語られています。
岩男を殺された日本軍にとって、リンは悪人となりますが、リンにだった正義はありあす。
そして、リンからすると、親を殺した日本人こそが悪人なのです。
リンにとっての正義は、親の仇を撃つこと。
それぞれの立場によって、正義と悪とは真逆のものとなり、また、リン自身、岩男自身の心の中でさえ、正義と悪は表裏一体のものとなり、共存しているのです。
八木の怒り
日本軍は、リンが見つからなかったと言っていましたが、八木はリンを見逃したのですね。
「リンが憎いか、幼馴染の仇を撃ちたいか」という八木の問い、
「生きのびるために忘れられる卑怯者か、忘れられない卑怯ではない者」どちらかという問い、
どちらも嵩の答えは「わかりません」でした。
そう、わからないのです。何が正義なのか。
すぐに逆転してしまう正義。
これまで戦争をどこか俯瞰した立場でとらえていた八木も、またこの理不尽な現実に怒りが抑えきれなかったのですね。
余談ですが、元々は八木とリンが対峙するシーンはありませんでした。
しかし、このシーンが無ければ、なぜ八木がリンの事情を知っていたのか疑問が残ります。
そして、日本軍が追う中、リンを見逃したという「八木の正義」の葛藤を描くため、このシーンが追加さえたのではと思いました。
空腹の中で見た父の姿
空腹が続く中、重度の栄養失調で倒れた嵩。
倒れた嵩の幻想に現れた父・清が遺した言葉が深く心に響きます。
こんな惨めでくだらないものを起こしたのも人間
でも人間は、美しいものを創ることができる
人が人をたすけ、喜ばせることもできる
これは、戦争体験を通じて、やなせたかしさんがその後を生きるうえで大切にしてきた想いなのだと思います。
今回なぜ、父・清が登場したのか。
それは、やなせたかしさん自身が、戦地で父親に見守られていたと感じていたからなのですね。
その詳しい理由や、清と中国の関係については、こちらの記事で詳しく書いていますのでご覧ください。

さて、あっかんの放送回でしたが、嵩の戦争体験は今日で終わります(おそらく)。
そして、明日は高知に部隊は戻ります。
そう、高知大空襲ですね。
これまで次郎さんを待つばかりののぶでしたが、ついに戦争の攻撃を体験するのぶ。
愛国精神と大切な人を想う気持ちの狭間で揺れ動くのぶが、高知大空襲である行動をとります。
明日の放送を楽しみに待ちましょう…。
《第58話|第60話》
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